■二人は、永遠の絆で結ばれた。罪という名の鎖によって。暗いトンネルの向こうに、光が見えている。そのほんの一筋の光は、希望を表しているようにも感じた。小さな村の、たった一つの出入口であるトンネルの目の前で、「野々村優人(ののむらゆうと)」は空想世界の絵を描いていた。光が届かないくらい遠い海の底に住む、人魚の女の子の画。その日は、ふと顔をあげると目の前に彼女が ――キャンバスの中と同じ、彼女がいた。小さく、狭く、閉じた、絵本の中のような、その場所に。そしてその村 ー 珠里村(たまさとむら) ― も優人も、その「真澄(ますみ)あい」という新しい住人を受け入れた。―― 光に手を伸ばし、それを辿るようにして、着いた場所で。■罪だと思い込んで生きるほうが、気が楽だったから。新学期、春。両親のいない優人にとって、入学式は憂鬱なイベントだった。校門の前で写真を撮ったり、新入生入場の瞬間をビデオカメラに収めたり、特別な一日を親子で楽しむ。その当たり前の景色が自分に欠如していることはもう慣れてしまったことだった。それでも桜の咲く前に、唯一の近しい親戚である祖母を失ってからは、急に寂しさを感じることがあった。そんな優人の孤独を知り、あいは自らの痛みを打ち明ける。■悲しい結末のほうが、記憶に残ると思っていたから。親に捨てられ、生まれながらの孤独を味わいながら、自分の生きる意味を探しているあい。父親を火災で亡くし、母と姉は行方不明。村に取り残され、空想の絵を描いて現実逃避をする優人。二人は真逆で、それから、よく似ていた。距離は縮まってゆく。優人は、ある後悔を抱きながら。あいは、ある嘘を隠しながら。秘密を抱えたままの二人が関わり、繋がり合おうとしていくたびにその罪はより強いものになり、絆になっていった。光には影が、あることを忘れたまま。
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エロゲー 12の月のイヴ
誰もが、様々な想いを抱えながらも、「慌しく過ごさなくてはならない」と急かされるような、ある年の瀬。都会からほど近いニュータウン・恵美市(めぐみし)でも、そうした風景が幅をきかせていた。【クリスマスイヴ】という名で知られる、その日。ごく平凡な青年・直人(なおと)は所用の道すがら、不思議な少女と出会う。出会った記憶のない、その少女を何故か「知人」と意識した時、彼らの物語は幕を開ける―。―ある者は、楽しく過ごす【時間】を守るため。―また、ある者は、無自覚に【何か】を手に入れようとして。―そして、ある者は、大切な【目的】を果たすために。それぞれの運命が、物語を織り成してゆく。
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エロゲー 夏空のペルセウス
7月のある日。山道を走るバスの車中。遠野 森羅(とおの しんら)とその妹・遠野 恋(とおの れん)は、不機嫌に言葉を交わしていた。「また、余計な首を突っ込んだりしないでよね」「あぁ」兄妹は、他人の「痛み」を自分に移すという力を持っていた。幼少の頃に身寄りをなくし、その力ゆえに他人に利用され続けてきた兄妹。彼らは、親戚の家を転々とするものの、どこにいても力のことを周囲に知られてしまい、結局、居場所を失い続けていた。「今度こそ気をつけてよ」という妹の剣呑な言葉に、「わかっている」と生返事をする森羅。「もう、聞いてるの?」「痛み」を癒すことも出来ず、自分に移すだけの役立たずの力。しかし、その力にはなにか意味があるはずだと森羅は考えていた。バスを乗り継いで着いた場所は、遠縁の親戚が暮らす・天領村(てんりょうむら)。三方を山に囲まれ、ひまわりの咲き誇る山村だった。初めて顔を合わせる遠縁の少女・皆川 翠(みなかわ すい)に出迎えられ、翌日から通うことになる学園に案内される。過疎化の進んでいる村では、複数の学年が1つのクラスで授業を受けることになるらしい。読者家の少女・菱田 あやめ(ひしだ あやめ)や、天使のような微笑みを浮かべる沢渡 透香(さわたり とうか)との出会い。村の相談役である翠の父親の薦めで、遠野兄妹は村の神社の社務所で暮らすことになる。管理する人間がしばらくいなかったこともあり、若い労働力を期待されてのこと―同時に、部外者を遠ざけ観察するための処置だったのだろう。だが、人と接触すると「痛み」を移されてしまう兄妹には、逆に都合のよいことだった。風鈴、向日葵畑、望楼のある高台。夏の山村に流れる穏やかな時間。そんな中、机を並べる少女たちが、それぞれ「痛み」を抱えていることを知る。遠縁の少女・翠は、足に怪我を。読書家の少女・あやめは、交通事故による両親の死という心の傷を。実の妹である恋は、他者への不信、兄である森羅への依存を抱えていた。とりわけ、天使のような微笑みを浮かべる透香という少女は、森羅にとって異質な存在だった。触れるだけで猛烈な「痛み」が走り、ドス黒い何かが流れ込む。それぞれの「痛み」を胸に。愛と犠牲が紡ぐ絆の物語が、そのはじまりを告げる―。
エロゲー ef − the latter tale.
かつて震災と大火に見舞われ、一度は焼け落ちた街――音羽。そこは現在、ヨーロッパの童話から飛び出してきたような、美しい街並みとして甦っていた。まるで、忌まわしい災厄の記憶を覆い隠すように……。クリスマスの夜。遠い約束の果てに再会した2人――火村夕と雨宮優子。互いが離れていた空白の時間。それを埋めるため、雨宮優子は自分の関わった2つの物語を語った。そして彼女は、真摯なまなざしで火村に問いかけた。「私も知りたいんです」「私が知らないあなたのことを――教えてほしい」火村は語る――。「彼女がいたから、俺は優子がここで待っているって知ることができた」「直接ってわけじゃないけど。少なくとも、きっかけを作った人間の一人だ」「それに、おまえが話した物語との深い関わりも持っている」「彼女の名前は、新藤千尋」『 ef – the first tale. 』はこちら──
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